「企業年金の引っ越し」と聞いて、ピンと来ない人は要注意だ。転職や中途退職をした際に必要な手続きを忘れると、年金資産の運用益が少なくなってしまい、老後の生活資金に少なからず影響が出ることがある。なぜそのような状況になるのか、対策とともに解説する。

企業型DCの制度がある企業の従業員は要注意

企業型確定拠出年金 (DC) を放置すると大損 !? 落とし穴にはまらないための基礎知識
(画像=tomatoko / stock.adobe.com)

企業年金制度は「確定給付企業年金 (DB) 」と「企業型確定拠出年金 (DC) 」 (以下「企業型DC」という) に分類される。このうち企業型DCの方は、転職や中途退職の際に適切な「引っ越し」の手続きをしないと、年金資産が「国民年金基金連合会」に自動的に移換されてしまう。

国民年金基金連合会に年金資産が移換されると、「塩漬け」の状態となり、その資産を運用して資産を増やすことも資産を引き出すこともできなくなるのだ。

「年金のことは60代になってから考えればいい」と思っていると、こうした事実を知らないまま、前述の落とし穴にはまる可能性がある。特に最近は、50代で転職する人も少なくないため注意が必要だ。

そもそも企業型DCとは ?

企業型DCについて、おさらいしておこう。企業型DCとは、企業が掛金を拠出し従業員が運用する年金制度である (規約を定めれば従業員が一定の範囲で上乗せして拠出することも可能) 。運用成績によっていずれ受け取ることになる退職金・年金の額が変動することが特徴だ。ただし、企業型DCを導入している企業と導入していない企業がある。

塩漬けの年金資産はどれくらいある ?

国民年金基金連合会のまとめによると、塩漬け状態になっている企業型DCは約2,600億円 (2022年3月末時点) に上り、約112万人分 (同年9月末時点) の資産が放置されているとのことだ。

ちなみに企業型DCの加入者数は2023年3月末時点で約805万人であることから、前述の「約112万人分」という数字は決して少ない人数ではないことが分かる。

注意すべきは「転職」や「中途退職」のとき

企業型DCの引っ越しが必要なのは、転職や中途退職のときだ。その際に押さえておきたいポイントを見ていこう。

どこに移換できる ?

企業型DCで積み立てていた資産は、転職先に企業型DCの制度がある場合、加入資格の対象者であることを条件に転職先の企業型DCに資産を移換できる。

確定給付企業年金の制度がある企業に転職する場合は、転職先の規約に「企業型DCからの移換を受け入れることができる」という旨が定められていれば、転職先の確定給付企業年金に資産を移換できるケースがある (厚生年金基金は対象外) 。

転職や中途退職をして公務員や自営業者、専業主婦 (夫) になる場合などは、iDeCo (個人型確定拠出年金) に資産を移換することが可能だ。

詳しくは確定拠出年金サービス株式会社の公式サイトでも確認できるため、自分のケースに照らし合わせて、移換の選択肢を押さえておこう。

手続きの期限は ? 移換の手続きをしないとどうなる ?

手続きの期限は、6ヶ月以内となっている。前述の通り、移換の手続きをしなければ、国民年金基金連合会へ資産が自動移換されてしまう。その際、手数料として4,348円がかかり、その後も毎月、管理手数料52円が資産から差し引かれる (2024年1月時点) 。

企業型DCは早期解約や自主移換はできないの ?

このような企業型DCの落とし穴を知ったら、早期に企業型DCを解約したり、転職前に自主移換したりしたいと考える人もいるかもしれない。

実際、そのための脱退要件は設けられているが、基本的には早期解約も自主移換も難しいといえる。iDeCoに加入できない者であることなど、複数の脱退要件に全て当てはまる必要があり、ハードルは非常に高い。

企業型DCの運用には年齢制限がある点にも注意

企業型DCは企業が掛金を拠出してくれることから、従業員にとってはうれしい制度だが、加入年齢や受取開始時期に制限があることも押さえておきたい。

また、前述の通り「塩漬け」という落とし穴も存在するため、企業型DCを頼りにし過ぎるのは考えものだ。できれば、こうした制限や落とし穴のない資産運用も並行して行っておくようにしたい。

生涯続けられる資産運用なら外貨積立

初心者でも始めやすい資産運用として、「外貨積立」を提案したい。外貨積立は企業型DCと異なり、現金が必要となればいつでも解約することができる。また、転職や中途退職の際に大きな手続きが発生することもないため、手間なく生涯続けることが可能だ。

外貨積立では、円預金よりも金利が高い米ドルや豪ドルなどの外貨を保有し、金利収入と為替差益の2段構えでリターンを狙っていく。為替レートは変動するため評価損を抱えることもあるが、金利収入はその外貨を保有している限り継続して得ることができる。

大きな金額を一括で日本円から外貨に変える方法もあるが、よりリスクを軽減したいなら一定額をコツコツと積み立てていく外貨積立に軍配が上がる。例えば円安のときに一括で日本円を外貨に換えてしまうと、いわゆる「高値掴み」の状態になり為替差益を得られにくくなるからだ。

その点、積立型であれば、円安のときも円高のときも一定額を積み立てていくため、こうしたことが起こりづらい。通貨分散や時間分散ができる運用方法と言えるだろう。

企業型DC以外でも老後の備えを

企業型DCについてしっかりと理解できているという人は少数派だろう。まずは、基本的な知識を身に付け、移換忘れにより資産運用のチャンスを逃してしまわないように注意したい。併せて老後に備える意味でも、企業型DC以外の資産運用として外貨積立を始めることをぜひ検討してほしい。

(提供:大和ネクスト銀行


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