本記事は、渡部清二氏の著書『プロ投資家の先を読む思考法 』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

投資
(画像=Lucky Ai / stock.adobe.com)

投資は「長期」が原則と考えよう

ところであなたは投資に何を求めていますか?

短期間でガツン! と大きく儲けることでしょうか? あるいは将来に向けて長期的に資産を作っていくことでしょうか?

私は投資の目的の善し悪しは、自分で決めればいいことだと思っています。

株式投資の初心者の方は、できるだけ早く投資効果を実感したいというのが本音でしょう。買ってから2~3カ月でスルスルと上がり、1.5倍とかになった時点で売却して、お金が増えたことを実感したいですよね。

資金が何百倍にもなって、いわゆる「億り人」になった人の話もよく聞かれます。

確かに、世の中には短期間で驚異的にお金を増やした人が存在します。数百万円の資金を元手に、それを数億にしてしまうような人もいるにはいるのです。

中にはその手法を公開している人もいます。教えてもらえるのならば、その通りにやれば自分も大金を手にできるのでは? と思ってしまうことでしょう。

ところが、ここがとても難しいところなのですが、ほぼ100%同じようにはできないのです。

残念なことに、短期投資でうまくお金を回して増やし、なおかつその一部を安定・定期に運用して長期的な財産を築ける人はごく一握りです。

一時的にうまくいくことはあるかもしれません。でも長いスパンで見た場合、投資で成功し続けるというのはとても難しいことなのです。

短期間で手っ取り早く資産を増やせれば、それに越したことはありません。私だってそんな方法があるのなら知りたいくらいです。

短期投資には再現性がない

投資の世界では「再現性」ということがよく言われます。投資でいう再現性とは、投資で一定以上の利益を得た人と同じ手法で同じ投資効果を狙うことを意味します。もしも同じような投資効果が上げられるのであれば「再現性がある」、上げられなければ「再現性がない」と評価されます。

短期投資で成果を上げ続けるのが難しいのは、ほとんどのケースで再現性がないからです。

なぜかというと、株式市場はまるで生き物のように刻一刻と姿を変えていくからです。

個々の会社の状況も変化し続けていますし、株価に影響を与える世界情勢や為替、金融政策もしかりです。

短期投資で成功した人とまったく同じ状況で勝負するということはまずできません。

成功したのは、その人が短期投資をしたタイミングと手法のめぐり合わせがたまたまうまくいったと考えたほうがいいでしょう。

そのタイミングや手法をいくら学んだところで、あまり意味はありません。

短期投資でうまくいく人は、何百万人分の一と考えたほうがいいでしょう。そのたった1人がやった方法とまったく同じ条件が、果たしてそろうでしょうか? そして同じ成果を上げることができるでしょうか? 「自分にはできない」と考えるほうが妥当だと思いませんか?

ところが、ものの本には「誰でも同じようにすれば何億もの資産が作れる」というようなことが書かれています。

そんなことはまずないと考えたほうがいいでしょう。

「人間は欲深い」ことを忘れない

もう1つ、お金に関して人の目をくらませるものがあります。それは誰の心にも存在する「欲」です。

人間は欲が深い生き物です。

仮に、投資の目的が「老後資金として5,000万円作ること」だったとしましょう。短期的な投資が思いがけずうまくいき、すぐに5,000万円の資産(含み益)が作れたとして、その時点ですべての投資商品を売却して利益確定ができるものでしょうか?

おそらくほとんどの人はできないでしょう。

「たったこれだけでこんなにうまくいったのだから、これから先はもっと儲かるだろう」と考え、資産を大きくしようとし続けることでしょう。

しかし、同じ手法を続けたとしてもうまくいく保証はどこにもありません。

相場は水物、常に動き変化しているからです。

「もしかして自分には投資の才能があるのかもしれない」と錯覚し、欲を出して大金を投資し、少なからぬお金を失ってしまった人を私は数多く見てきました。投資は長期で行い、投資の目的を忘れないことが大事

投資で資産形成をしたいのであれば、長期投資が基本と考えてください。

また投資の目的を忘れないことも大切です。

何ごとも目標設定ができてはじめて、そこに至るまでのルートが見えてくるものです。

富士山に登頂しようとするとき、計画も立てず必要な装備も用意せず、むやみやたらと登り始める人はあまりいませんよね。

1日目の何時までに何合目へ、登頂は何日目の何時ごろ、とおおよその計画を立てるのではないでしょうか。ただし、山頂に至るには、1歩ずつコツコツと歩みを進めることがいちばん大切です。

自分の足で歩かないことには、いつまでたっても山頂に立つことはできません。

長期投資もそれと同じことです。

まずは自分の登りたい山(=目標額)を決め、その目標に到達するためには、いつごろまでにどれくらいの銘柄数・株式数が必要なのかを、段階的にあらかた決めておきます。

あとはコツコツ買い続けていくだけです。

長期投資という登山には、思いがけない「おまけ」がついてくることがあります。株価が想定したより大きく値上がりしたり、株式分割などで持ち株数が増えて、想定した以上に資産額が大きくなったりする可能性があるのです。

あなたの長期投資という名の登山は今始まったばかり。これが将来、どんな姿を表してくれるのか、楽しみに待ちましょう。

プロ投資家の先を読む思考法
渡部清二
複眼経済塾 代表取締役塾長1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。25年以上継続しており、2023年秋号の会社四季報をもって、計104冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年、複眼経済塾に社名変更。2017年3月には、一般社団法人ヒューマノミクス実行委員会代表理事に就任。テレビ・ラジオなどの投資番組に出演多数。「会社四季報オンライン」でコラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一『四季報』を愛する男」と紹介された。近著に『会社四季報の達人が全力で選んだ10倍・100倍になる!超優良株ベスト30』(小社刊)、『四季報を100冊読んでわかった投資の極意』(ビジネス社)などがある。〈所属団体・資格〉公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定AFP国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト神社検定2級、日本酒検定準1級、大型自動車免許

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