◉プライベートバンクに対する期待と注意点②運用のスタイルは高収益追求ではなく資産の保全


また、プライベートバンクというと金融サービスだけではなく、絵画や不動産の購入、また子女への学校斡旋や進路相談などを行う非金融サービスに魅力を感じる方も多いと思います。しかし、そういったサービスは古くから付き合いのある特定の顧客にしか提供されないケースも多く、注意が必要です。

また、プライベートバンクに預ければ必ず資産が増えるという考えは幻想です。プライベートバンクに預けても、運用次第でマイナスに転じることもあるからます。
そもそも、資産の保全と守秘性に重点を置くプライベートバンクの利用者は、積極的に資産を増やすことより、次世代へ既にある資産を確実に受け継いでいくことを重視しています。

ですから、インフレに打ち勝つ程度の利回り、3%〜5%上がれば、10億円預けて3千万円から5千万円の収入になりますから、それで十分という運用スタイルが通例です。

◉プライベートバンクに対する期待と注意点③節税目的にも注意が必要


特に日本でのプライベートバンクの需要を聞くと、所得税や相続税の最高税率の高さから、海外投資などを活用した節税目的という声を多く伺います。

参考:お勧め記事の紹介「オーナー経営者がこぞって企む相続税節税の㊙テクニック」

しかし、スイスでは、非居住者のキャピタルゲインは非課税になりますが、これは、源泉徴収課税されることはないということであり、日本に居住する日本人は、キャピタルゲインがあった場合には、キャピタルゲインが生じた国や地域には関係なく、日本の税務署に申告する義務が生じます。これは、スイス以外のオフショア地域(租税回避地)を利用した場合も同様です。

一部で、プライベートバンクに預けて資産を増やし、その資金を日本の銀行に戻さなければ、税金を支払わなくて良いという誤った指南をする会社も存在します。これは大きな誤りです。資金が日本の銀行にあっても、外国の銀行にあっても、キャピタルゲインがある場合は、税金を支払わなくてはなりません。

ただし、預金に対する利息や配当は、実際に利益が確定し、その利益を享受していますから、税金の申告対象となりますが、投資運用商品を運用中にいくら時価総額が上昇していても、その運用商品がオフショア等の非課税のスキームで運用をされている場合には、解約をしなければ、課税がされる日本での利益は確定していないため、合法的に税金の支払いを繰り延べることが可能です。

BY C.O

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